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大自然は人間が変わるのをずっと待っている

 自然農法では、栽培の過程で理にかなわない事をしてしまうと、たちまち成長しなかったり、害虫にやられたりして、いい結果を得られません。身近な例を挙げると、トラクターで耕す時の水分が多すぎると土を練ってしまい、その後どれだけ丁寧なお世話をしても育ちません。もし、これが自然農法ではなく一般的な農法であれば、たとえ少々間違った栽培をしても、肥料の力で成長し、農薬の力で病害虫を抑え、難なく収穫に至るでしょう。理にかなわない事をしても野菜が出来るのであれば、人間はそこから学ぶ事は何もありません。しかし、自然農法でいい野菜を作りたければ、生産者はどうしても大自然の摂理に目を向けるしかありません。心を開いて、大自然の声に耳を傾ける事が出来れば、畑の中での成功や失敗は、全てが学びの教材となります。

 自然農法の農場では、作物が育っている事以上に重要なのは、人が育っているという事だと思います。そこに、自然農法の目的があるように感じるからです。そうでなければ、それは“無肥料、無農薬栽培”という単なる栽培のやり方になってしまいます。農業は数ある職業の中のひとつではなく、人間として豊かで幸せに生きていくための生産活動そのものです。自然農法には特にそのメッセージ性が強くあります。大自然と生命の性質。それは、多様性、調和、バランス、至福、プロセス、循環などです。自然農法はそれらを見事に表現しています。

 自然農法を広げようとすると、困難に突き当たることが度々あります。どうしてこんなに素晴しいことが広がらないのだろう?それは、“人間の生き方の変革”という、大きな課題を伴いながらでないと自然農法は普及していかないからです。そこに、自然農法の意味があります。肥料を加えてもっと沢山獲ろう、もっと早く収穫しよう、農薬を使ってでも、とにかく売り物になればいいという経済中心のあり方から脱却して、命のルールに沿った生き方に変わらなければならない時期に、人類は直面しています。

 私は以前、ドイツから来られたアナ・リサさんという方に出合いました。彼女は不思議な能力を持っており、植物と話が出来るのでした。彼女のおじいさんも、そのような能力を持っているようでした。彼女は世界有数の農薬大国である日本の土を見るなりこう言いました。「日本の土は心を閉ざしている」と。それでも、土は我々にずっと食物を与え続けて来てくれました。それはこれからも変わる事はないでしょう。

 大自然は何千年でもずっと人間が変わるのを待っています。


                                     橋本 進


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